ROCKYOUそれから31

お母さんはオレの涙が落ち着くまで優しく背中を撫ぜてくれた。まるでオレもお母さんの子どもになったみたいで照れ臭くてくすぐったい。

雅紀くん、落ち着いた?

はい。泣いちゃってすみません。

うふふ。じゃんじゃん泣いてくれていいのよ。翔もあなたの前ではよく泣くの?

ふふふはい。しょーちゃんは嬉しい事があったり感動した時に感極まって泣いちゃうみたいです。

オレの言葉にお母さんの目尻にも、涙がにじみ始める。

小さい頃の翔はすぐ泣く子でね。夜にひとりでトイレも行けないような怖がりだったんだけど。主人のお葬式の時に泣いてる私の姿がよっぽどショックだったのかな。その時から私や弟妹の前で一切泣かなくなったの。

そうなんですか。

だから母親として恥ずかしいんだけど、翔の泣き顔を思い出せないの。

きっとひとりで泣いたりしたんだろうなって思ったら切なくなっちゃうんだけどね。

でも今じゃ、雅紀くんの前では我慢せずに思う存分泣いてるみたいだし。

それを聞いて翔は本当の姿をさらけ出せてるんだって安心したわ。

改めて翔には雅紀くんが必要なんだなって確信した。

脱衣所からはドライヤーの音とその合間にしょーちゃんの鼻歌が聞こえてくる。

だから!雅紀くん?私はあなた達の交際に反対なんかしてません。むしろ、翔をよろしくお願いします。

お母さん。オレ。

その言葉を素直に受け止めてもいいのか。

どう答えていいものか。

うまく返せずに言葉を探していると、お風呂上がりのほかほかしょーちゃんが戻ってきた。

あー気持ちよかったー。雅紀も入りなよ。あれ?どうした?

手と手を取り合ったままのオレとお母さんを交互に見てしょーちゃんが噴き出す。

ふたりとも?手を握り合っちゃって母と息子の絆を深めてんの?

うふふ。そうよぉ。雅紀くんが実の息子より可愛いくってハグしてたの。ねぇ?雅紀くん?

お母さんがしょーちゃんに見えないようにオレにウインクして笑う。

ぽかんとするしょーちゃんが可笑しい。

あっそうだ。冷蔵庫にメロン冷やしてるの。食べましょうよ。

慌ててキッチンに戻るお母さんの背中を見ながらしょーちゃんがオレの隣に座る。

オレの顔を心配そうに覗き込んで親指で目の下に触れる。

雅紀?泣いただろ?母さんにはちゃんと言ってるから心配しなくても大丈夫だよ。

しょーちゃんありがとう。

優しく微笑んでうなづくしょーちゃん。

いつまで経ってもしょーちゃんには何でもお見通しだ。

翔って雅紀くんの前だと随分デレデレになるのねえ。

そんなの当たり前だろ?雅紀が可愛いんだもん。

ねえ、翔?あなた、そんなこと言うキャラだった?

これが本当の俺の姿なの。

呆れたーって笑うお母さんと。

あははって豪快に笑いながら、さり気なくオレの手を握ってくれるしょーちゃんと。

瑞しくて甘いメロンの味をオレは一生忘れない。

広告を非表示にする